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ホースクリニシャン・宮田朋典氏の共生メソッド01_ジョインナップで信頼関係を築く

「馬と人」の理想の関係──、それは、深くて温かいものだ。ここでは、ホースクリニシャンの宮田朋典氏を講師に迎え、人と馬のよりよい関係の構築を探るシリーズ企画をお届けしていく。

Lecture 2018.07.18

ホースクリニシャン・宮田朋典氏の共生メソッド01_ジョインナップで信頼関係を築く

人をα(リーダー)として認識すると、馬は人の僅かな動きの指示に従う。群れで行動する馬にとってリーダーの存在は自分たちの安全を担保する上で必要不可欠のものであり、自らをα(リーダー)として認めさせることが馬と人の共生関係のもっとも大切な部分となる。その共生関係を築く上でもっとも基本でありもっとも大切なトレーニングがここでご紹介するジョインアップだ。まずは宮田さんの的確なジョインアップ術をご覧いただこう。

 「距離を自然に縮めることが大事です。無理はいけない」。この“自然に”という言葉を実践に移そうとしてもなかなかできないのが我々の常である。馬との関わりの原点を見直して調教することが、いかに大切であるか、宮田さんのグランドワークを見ながらいつも感じさせられる。

01_馬も多少警戒心をもち、最初は距離がある。しかし焦りは禁物だ。ステッキを持ってはいるがこれはあくまでも、手の延長である。距離感を楽しむ気持ちで待つことが大事だ。

 

 宮田さんが日本全国を駆け巡りながら、馬を癒し、馬と人との関係を癒す姿を追いかけ、その取り組みをお届けする1回目。馬とこのような関わり方をしてこなかった人には新鮮に感じられるだろうし、また馬に接するのが初めてであっても興味深く体験できるメソッドなのだ。
 それは「馬との信頼関係を築くこと」である。人と人との間でもそうであるように、馬と人との信頼関係は年月によって築き上げられることも事実である。だが、短い時間でも認め合うことはでき、その一瞬を積み重ねれば信頼関係は強固なものになっていく。今回お見せするのは、ジョインアップの一部。馬の心理や生態にもとづき、「馬がリラックスした状態で指示を“自然に”受け入れてくれる」メソッドとも言い換えられる。

02_ちょっとしたリーダーのアクションに反応すれば、信頼の近さの証だ。目が合ったら少し目をふせ、プレッシャーを弱めると、「あなたとは戦わないよ」という合図を送ることになり馬は安心する。

 

 「距離を自然に縮めることが大事です。無理はいけない」。この“自然に”という言葉を実践に移そうとしてもなかなかできないのが我々の常である。馬との関わりの原点を見直して調教することが、いかに大切であるか、宮田さんのグランドワークを見ながらいつも感じさせられる。
 宮田さんが日本全国を駆け巡りながら、馬を癒し、馬と人との関係を癒す姿を追いかけ、その取り組みをお届けする一回目。馬とこのような関わり方をしてこなかった人には新鮮に感じられるだろうし、また馬に接するのが初めてでも体験できるメソッドなのだ。
 それは「馬との信頼関係を築くこと」である。人と人の間でもそうであるように、馬と人との信頼関係は年月によって築き上げられることも事実である。

03_指示した方と逆に走った場合は、NOという合図を送り続けて折り合いをつけることが大事だ。リリースの取り方をうまく使おう。草食動物の注意力散漫な性質も認めてあげよう。

 

だが、短い時間でも認め合うことはでき、その一瞬を積み重ねれば信頼関係は強固なものになっていく。今回お見せするのは、ジョインアップの一部。馬の心理や生態に基き、「馬がリラックスした状態で指示を自然に受け入れてくれる」メソッドとも言い換えられる。
 ここではメソッドの基本にしてもっとも大切なテーマである「馬と人との信頼関係の構築=馬が人の指示を受けとめること」の過程をご紹介したい。
 この日のグランドワークでは、牝馬特有の警戒心の強い馬が登場。いつもの人とは違う見慣れない宮田さんに対して、最初は距離をとって、近寄ろうとはしない警戒(マイナス)の関係からのスタートとなった。ここで大事なポイントは、「人の側にすぐ集中させない」という点だ。馬がリラックスするのを待つ、という点がとても大事である。こっちを向けと性急な要求を押しつけたり、態度で表すことは逆に馬の集中をそぐことになるからだ。
 最初の一歩で、人がα(リーダー)と同じ役割を果たすためには、小さなアクションで馬が動くようにすることが大切である。

04_頭を下げるのはリラックスの証拠。自分からリラックスを求めるようになれば、ストレスにも強くなってきたしるしだ。イコールの関係で話し合いをつけることがベストといえる。

つまりは、馬の自主性を導き出すことであり、宮田さんいわく、「ミニマムでマキシマムを狙う」動作だ。人が少し指を挙げただけで、馬が頸を少しあげて駈け出したり、速度をゆるめながら人の方に耳を向けて、チラッと見る瞬間がある。そのときが、交渉のチャンス到来だ。
 そこですかさず、指示を出すのが重要である。それはあなたを、αと認め、「次にやることは何ですか?」と意識している証拠なのだから。馬を止まらせたいと思った時には身をかがめて止まる合図を送る。

05_距離がある内は触ると震えるが、αの関係をしっかり築けば自然と近づける。馬に、走って逃げて幸せよりも、指示を受け入れて幸せになる経験をもたせるよう心がけよう。

指示通りに止まって近づいてきたら、その達成を褒めてあげることも重要だ。よくありがちな、次から次へと指示を出そう出そうとするのではなく、馬が何をしようとしているのか、何ができるのかを見極めて待つ時間と、できた瞬間に褒めることが信頼関係構築の鍵である。つまり、信頼を築けるまでの距離感を余裕をもって保ち、そのために忍耐し、そして対等の関係のなかでの駆け引きを行う。馬はとてもシンプルなので、人の側もシンプルな気持ちで、一瞬の馬の動きを見逃さずに交渉を心がけてみよう。  そしてジョインアップの基本をある程度身につけたら、もう少しコミュニケーションのハードルを上げてみよう。馬は見慣れないものや音などに対して警戒心が強い。ここでは宮田さんに脚立を持っていただいた。馬は「ちょっとおっかない……」という感じで宮田さんの方を見ながらも止まらずに再び距離をとって動く。「受け入れたいが、こわい」という感情の表れだ。が、好奇心が強く、αに従う気持ちがあるため近寄ってくる。その思いを尊重し、敢えて何もせずに見守る。したいようにさせて様子を見てみよう。このように、あらゆる物への恐怖心をなくし瞬間瞬間のシチュエーションを克服させるには、基本の信頼関係を築くジョインアップが大事なのだ。

 加えて、ここでは「馬の基本行動」についても解説しておこう。  馬は20頭ほどからなる一つの群れを形成する。そして、馬は逃げるということで身を守る習性をもつ生き物だ。群れの中で仔馬は、好奇心なども作用し群れの外へ出ようとする。強い精神力と体力を仔馬に宿すために、母馬はわざと外に追い出したり、引きよせたりしながら教育していく。

しかし、人間は……。そのスピードに追いつけない。よって、人をリーダー(αとする)と馬が認めて指示を受け入れやすくするには、人間が追いつけないぐらいの遠くへと逃げていってしまわない丸馬場などで行なう必要がある。安全な群れの場に戻ってくるようにさせる、つまり帰巣本能を想起させる生態や心理を活用したのが、ここで行なわれたジョインアップとなる。母馬は母馬で、リーダー(α)の馬の指示に群れでは従っている。図で示したとおり、母馬と仔馬の関係が、αの馬と母馬の間でも成立している。αになるには、肉体や精神面が強く、相手の方向とスピードを御せることが条件だ。 ● 宮田朋典(みやた とものり) 1971年5月4日生まれ/米国などで馬の心理学、行動学、装蹄学、ロジックトレーニングを学ぶ。バイオメカニクス理論をベースとして、競走馬、乗用馬、競技馬や、馬場馬セラピーホースなどの調教や、悪癖矯正を行っている。

初心者からプロのドレッサー ジュライダー競馬ジョッキーに至る、騎乗者を対象としたクリニック指導、体使いのコーチングレッスンも行っている。ウィスパリングを軸にした

ナチュラルホースマンシップの講習会などを、全国各地で開催する。那須野ケ原ファーム、加藤ステーブル、社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院 研修講師、宮崎ステーブル 足利市グランドポニー所属。