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憧れの英国乗馬を学ぶ 02_ウィンブルドン・ヴィレッジ・ステーブル

日常に乗馬の風景が溶け込んでいる英国では、ブリティッシュ・ホース・ソサエティ(BHS)による、馬術教育のシステムが確立されている。今回はウィンブルドンの街中にあるちょっと変わった乗馬学校をご案内。

Lifestyle 2018.07.17

憧れの英国乗馬を学ぶ 02_ウィンブルドン・ヴィレッジ・ステーブル

馬とクルマ、どちらもまったくストレスを感じることなく見事に共存している。まさに英国の乗馬文化とその懐の深さを象徴する光景といえるだろう。街中の住宅街、といってもけっこう賑やかなエリアに厩舎を構える「ウィンブルドン・ヴィレッジ・ステーブル」。ここに20頭以上の馬が暮らしているが、近所からクレームがくることなどまったくないという。Photos:Yasuo Konishi

 

イギリスと日本の乗馬環境の違いを驚きとともに実感するのがここで紹介するような街の光景を目の当たりにした時だ。一般のそれもかなりの交通量の多い車道を馬が闊歩している。これを実際に現場で目の当たりにすると驚きというよりショックに近いものが身体の中を突き抜ける。馬を通してもらうために馬上から車に手で合図をすると、ドライバーは当然

のように停止し、馬が通り抜けるのを待っている。クラクションを鳴らしたり、隙間をすり抜けて行こうしたりする車もない。そして歩道を歩く人々もまったく馬に関心を向けていない。思い思いにショッピングを楽しみ、友人たちと語り合い、ただただ先を急いでいる。つまり、車道を馬とクルマが車道を共有している光景は、ごく当たり前の風景ということなのだろう。馬が優先、それはこの国の当たり前の決まりごとなのだ。

 
 けっこう賑やかな住宅街に厩舎があるからだろう、見た目も清潔で手入れが行き届いている。子どもたちが馬に触れ合うためにやってくるには最適の場所だ。この乗馬クラブでは、BHS公認の馬のケアに関する資格も取得することができるが、人と馬の距離が近いこのような場所だからこそ、馬にストレスを感じさせることのないケアを日常的に実践できる知識と技術力を磨くことができる。偶然この日は、ウクライナからのビジターが来ていた。たまたまロシア出身のインストラクターがおり対応していた。
 
 ここはテニスの殿堂として有名なあのウィンブルドン。ロンドンの中心から南西に20キロほどの文化の香り高い町だ。ここに乗馬クラブがあるという。馬場があるとは思えない地区だが、住所から辿り着いた所はDOG & FOXというパブの横。Wimbledon Village Stablesとゲートに表示がある。そこを入ると確かに厩舎がある。いや、厩舎しかない。この乗馬クラブの代表、キャロル・アンドリュースさんに話を聞いた。
「この厩舎には25頭います。アイリシュが中心です。
 
そしてフルタイムのスタッフが10人。ここから近くにある緑地、ウィンブルドン・コモンに行き、そこで外乗か馬場レッスンのどちらかを選べます」
 こう話している間にも数組のグループが馬装をして道路へと出て行く。ウィンブルドン・コモンは4.6平方キロメートルとかなり広いが、それに接するリッチモンドパークは10平方キロメートルもあり、このような豊富な緑のエリアを大切にしているのもイギリスの特徴だろう。
 この乗馬クラブはウィブルドン・コモンに馬で入る許可を得ていて、中ほどに馬場にぴったりのリング状の広場があり、ここで馬場と障害の馬術レッスンを行っている。初心者から上級者まで対応可能だ。またここには少し小高い丘陵部もあり、外乗のトレーニングにはぴったりの場所となっている。ここもBHS認可校で、馬術だけでなく、馬のケアに関する資格も取得することができる。
 事前に予約をすればビジターも受け入れている。しかし、ウィークエンドは避けた方がよさそうだ。最近は海外からのビジターが多く、この日もロシアからのビジターが外乗を楽しんでいた。インストラクターも数カ国語の対応が可能だが、残念ながら日本語の話せるインストラクターはいないそうだ。
 キャロルさんには夢がある。子どものための乗馬学校を作ること。夢を夢だけで終わらせない、そんな思いが伝わって来た。

Wimbledon Village Stables 24 a/b High Street Wimbledon SW19 5DX
Tel:020 8946 8579
www.wvstables.com