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トルコ馬紀行_1奇岩群を行く、異次元ライディング

アジアとヨーロッパの中継点、トルコ。東西の文化が混じり合うことで独特の歴史文化が育まれたこの地が、乗馬のメッカであることは意外と知られていない。今回はそのトルコでしか味わえない外乗の世界をご紹介。

Lifestyle 2018.08.01

トルコ馬紀行_1奇岩群を行く、異次元ライディング

奇岩がそびえる世界遺産カッパドキアでの乗馬は、まさに異次元の体験。時間と共に刻々と変化する風景は、朝と昼、そして夕刻ではまったく異なった表情を見せる。その美しい不思議な世界は、日がな一日、鞍上で過ごしてもまだ物足りない。photos:Yasuo Konishi

ダルトン・ブラザーズ・ランチでは、奇岩群の谷を歩く外乗が楽しめる。平坦な道を進むコースがあるので、初級者でも体験可能だ。斜面は滑りやすく道が狭いのでかなり上級者向け。

 

トルコ中央部のアナトリア高原に広がる世界遺産、カッパドキア。大奇岩地帯が広がるこの地では、トルコの中でも馬の生産が盛んに行われている。今も牧場が多数あり、トルコの騎馬遊牧民さながらの外乗が体験できる。その背景にあるのは、紀元前1700年頃、ヒッタイト帝国の時代に馬の育成が盛んに行われ、トルコ民族もまた優れた騎馬遊牧民であったことに起因する。

イスタンブールから国内線で約1時間半。ネヴシェヒル・カッパドキア空港からさらに1時間ほど車で移動するとカッパドキアに辿り着く。乾燥した大地に広がる奇岩群は、想像以上のスケールで見る者を圧倒する。数百万年前、この地域の火山が噴火を繰り返し、火山灰や溶岩が降り積もって玄武岩や凝灰岩などの岩石地帯が形成された。その大地を風雪と雨水が浸食し、寒暖差といった自然の力が岩を削りとることで、不思議な奇岩群が生み出された。

カッパドキアという名前は古代ペルシア語の「カッパトゥカ」に由来し、「美しい馬の土地」という意味を持つ。ペルシア帝国の首都・ぺルセポリスの王の宮殿には、カッパドキア人がペルシア皇帝に馬を献上する場面が描かれている。

そのカッパドキアの中でも奇岩群が多く見られるのが、世界遺産に登録されているギョレメ国立公園だ。11世紀にアナトリアに侵攻したトルコ民族は、まるで神が創り出したかのような巨大な奇岩群を見て、「見てはならないもの」という意味の「ギョレメ」と名づけた。

牧場のスタッフは皆乗馬歴が長く、エンデュランス競技にも多数出場している。日中は牧場周辺の草原に馬を放牧させているが、夕方になると洞窟を活かした牧場内へ。

 

 ギョレメの中心部から車で約5分の場所にある『ダルトン・ブラザーズ・ランチ』では、まるで巨人の足元のようにそびえ立つ奇岩群の風景をぬいながらの外乗が楽しめる。主なコースとして2時間外乗と4時間外乗があり、ピンク色に染まる夕景スポットとしても有名なローズバレーまで向かう外乗が特に人気だ。

 この牧場が所有する馬はトルコの在来馬であるアナトリア種が中心。アナトリア種は体高が平均1.34メートルと小柄だが、がっしりとした体形で持久力に富んでいる。16世紀頃のオスマン国家ではアラブ種が好まれたため、現在生息するアナトリア種にはアラブ種の血が混ざっていると言われている。

 「アナトリア種は丈夫で素直で軽快に動く、素晴らしい馬です」と語るのは、この牧場のオーナーであるエクレム。ギョレメ出身の彼は、馬乗りであった祖父とともに子どもの頃から山へ出かけ、野生馬を捕獲していたと言う。独学で乗馬の腕を磨き、調教技術を身につけた彼は、現在はトルコのホースウィスパラーと呼ばれているほどの馬のスペシャリストだ。アナトリア高原最高峰のエルジエス山には野生馬が生息しており、冬になると山の麓まで降りてくる。その野生馬をロープで捕らえて牧場に連れ帰り、調教し、乗用馬にして販売している。

 野生馬を捕獲する際の良い馬の見分け方を聞くと、「馬を見れば分かる」のひと言。幼い頃から野生馬と向き合って磨き上げた感覚は、言葉で説明することができないと言うことだろう。この牧場は奇岩群での外乗だけでなく、美しい馬の地で育った馬の魅力もまた教えてくれる。

The Dalton Brothers Ranch(ダルトン・ブラザース・ランチ) Goreme, Cappadocia Tel.+90 384 271 28 40

www.cappadociahorseriding.com