ホースクリニシャンを描いた映画として、本誌でも以前取り上げた「モンタナの風に抱かれて」という作品がある。そこでは馬と心を通わせるために“待つ”ことの大切さなど、随所に馬との交流方法のヒントが散りばめられている。今回ご紹介するメソッドは、この映画の途中の、ある一場面に関係する。一瞬ではあるが、主人公を演じるロバート・レッドフォードの背中がぼやけて見えたかと思いきや、クリアになっていくシーンである。お気づきの読者の方もいただろうか?
これは、馬の目からの見え方を表現したシーン。また、背中を見せることで好奇心と安心をそそり、馬に見たいと思わせる「間」を敢えて与えているということも示すのだ。馬が像を結ぶには、ある一定の距離や時間が必要である。そのことを踏まえた上で、恐がらずに馬に近づいていってほしい。しかしながら、馬がいきなり立ち上がったり、噛もうとしたり、手綱を引っ張っても止まらなかったり、逆に引っ張っても進まないなど……、馬に初めて接する場合は特に、馬を知らないゆえにとまどう行動を馬が取ることもある。それが原因で、馬に接することに不安を覚える人も多いことだろう。だからこそ、なぜそういうことが起こり、どう対処したらよいのかを知りたいと考える人もまた多いはずだ。まだ日本では、馬の生態から心理までを総合的に鑑みた上で馬に接する理解が進んでいるとはいえない。が、 宮田氏がお伝えする共生メソッドのポイントは、「知ることで楽しみを得て、相手を許せるようになること」だ。つまり、相手を知って共生できるようになろうというもの。動物だからしょうがない、ではいつまでも距離は縮まらないのだ。