前回は厩舎での馬のちょっとした行動にはどのような心理が働くのかをご紹介した。今回は馬の心理を知った上で信頼関係を築き、その関係ゆえに成り立つ引き馬の極意をお伝えしよう。
Practice 2018.08.28
馬が人を追い越さないことを学んでいると、同じスピードで走る。そして頸を固定せずにバーを認知させれば、信頼している人となら一緒に障害を飛び越えることも可能だ。
ホルターの幅が広いよりも細い方が、馬がプレッシャーとリリースの方向を探しやすい。ここでは馬に指示を理解させやすくするために最初に細いロープを選択。
「馬が自ら判断する」引き馬で重要なのは、ロープが張って引っ張られるから馬は前へ進む、という状態にしないことだ。ロープがゆるんだ状態でも、前に行ったら楽になる感覚を持たせることだ。引っ張って動こうとしないときは、無理に引っ張らず、まずは待ってみよう。ロープの引きを合図にして、感じるプレッシャーについてくるようにさせ、まずは前に一歩進むように促すとでもいおうか。理想的には、ロープを引っ張る合図以外の小さな合図でも人と同じ歩様で歩いてついてくるようにさせるのが引き馬というわけだ。
目の前のものが害を与えないと視覚的に認識させ、信頼している私が促すから大丈夫という関係をつくり上げることが大切だ。
その見慣れないものが害を与えるものではないことを忍耐強く視覚的に認識させ、あなた(馬)が信頼する私(引き手)が促すのであれば大丈夫という信頼関係を馬との間に作り上げるのが、引き馬の極意といえる。
● 宮田朋典(みやたとものり)
1971年5月生まれ。米国などで馬の心理学、行動学、装蹄学、ロジックトレーニングを学ぶ。バイオメカニクス理論をベースとして、競走馬、競技馬、セラピーホースなどの調教を行う。
初心者からプロのドレッサージュライダー、さらには競馬ジョッキーにいたる騎乗者を対象としたクリニック指導、競走馬やドレッサージュ馬などの再調教(月に約250頭)や、ウィスパリングを軸としたナチュラルホースマンシップの講習会などを全国各地で開催する。
加藤ステーブル、宮崎ステーブル、社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院 研修講師、宮崎ステーブル、足利市グランドポニー所属