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YOGAインストラクター・吉江理加先生の「呼吸」と「丹田」を整える、騎乗前の5分間YOGA

ここでは騎乗前に簡単にできるウォーミングアップ・ヨガをご紹介! 厩舎のステップを使うなど、馬に乗る前に、わずか5分程度で完結する気軽な柔軟体操なので、即チャレンジしてほしい。ポイントは呼吸。深い呼吸を意識してみよう。それだけでいつもの乗馬が大きく変わるはず。text:Hiromi Nakano

Lecture 2020.02.14

YOGAインストラクター・吉江理加先生の「呼吸」と「丹田」を整える、騎乗前の5分間YOGA

乗馬とYOGAの親和性はすこぶる高い。股関節や膝、肩などの関節をやさしく動かしながらその可動域を広げる。そして常に体幹(丹田)を意識し、インナーマッスルを鍛えることで、あくまでも柔らかくしなやかな身体を作る。そんなトレーニングが騎乗姿勢にどれほど効果をもたらすか、まずは自身の体で試してみてはいかが。

ウォーミングアップヨガのススメ

月のポーズ⇨センターブリージングで自分の中心を捉えられたら、実際に立位のポーズを進めていこう。頭上で合掌し、息を吐きながら真横に身体を倒す。中心はずらさないことがポイント。次に息を吐いて肩の力を抜いていこう。
三角のポーズ⇨骨盤の横に手を置いて、息を吐きながら身体を真横に倒す。手で少し骨盤を押すのがポイントだ。下の手で骨盤を押し、反対の手を伸ばすことで体側を伸ばしている。逆向きのエネルギーを利用して十分に体側を伸ばそう。

騎乗時には身体の状態と同様に、心の状態も柔らかくあることがとても重要だ。ここでご紹介するのは、呼吸を深めて、身体のセンターを意識することを目標とする騎乗前のウォーミングアップYOGAだ。馬はもともと穏やかな生き物なので、人が心のバランスを欠いて片意地を張っているだけでも緊張を招いてしまうことが多々ある。また、自分の心を穏やかに保つことができれば心に余裕が生まれてきて、人馬ともにさらにリラックスすることが可能となる。そして何よりも心も身体も柔らかくあれば、馬の身体の細かな動きも感じ取ることができるようになるし、その動きの変化にも自然体でついていくことができるようになる。

 

平常心に近い呼吸を心掛ける

英雄のポーズ⇨続いてステップを使った英雄のポーズ。骨盤は正面を向かせて、後ろ足の鼠頸部のストレッチと、背中の柔軟をおこなう。身体の前面を伸ばして、女神のポーズに発展させてもよい。足を縦に開くことで、ほぐしていこう。脚を左右入れ替えて行う。

そしてもう一つ、馬に乗るときにどうしてもありがちなのが、息を止めてしまうことである。目の前に障害があってそれを何とか避けようとしたり、原因不明の何かにおびえた馬が姿勢や挙動を大きく崩してしまったり、そんな時こそ身体のどこにも余分な力みがない自然体の心構えが必要となるが、多くのライダーにとって、頭では理解していてもなかなかそのような緊張状態の中では平常心の心と身体を保ち続けることはほとんど不可能になる。そこで、ウォーミングアップヨガでは、特に呼吸を意識したヨガを重点的におこない、心身ともにリラックスできる馬上での呼吸法を身につけるためのトレーニングを念入りに行いたい。できるだけ平常心に近い呼吸を心掛けること、これが結果的にケガなどのトラブル予防につながるからだ。

 

氣の玉(丹田)を常に意識する

開脚のポーズ⇨続いて、両足を縦に開いて太もも裏とひざ裏を延ばすポーズ。前後に開脚させて足の裏の伸びを感じよう。写真右下のように、背中でナマステができない場合は、ひじを掴んでもよい。負担のないほうで実践しよう。

歩いているときや座っているときはもちろんのこと、乗馬をしているときでも身体のセンター(丹田)を意識することはとても大事なことだ。おへそから指4本分ほど下がったあたりの下腹部を丹田という。大地にしっかりと足をつけて、この部分に氣の玉を感じ、息を吸って上げ、吐いて下げる。呼吸に合わせて上下に移動させ、最後は中心に移す。氣の玉は3段階で胸を段々と開きながら膨らませるのがポイントだ。

 

崩れた騎乗バランスを鞍上で取り戻すために

ダウンドッグからコブラのポーズ⇨背中の柔軟性を高め、腰部をストレッチする。写真1のダウンドッグから写真2のコブラのポーズに移動させて完成だ。コブラのポーズでは、胸を開いて、骨盤の前後の動きを感じよう。

そこで、騎乗中にたとえセンターが多少ブレてバランスを崩しても、そこからもう一度バランスを取り戻せるようにするのがこのヨガのポイントだ。身体のセンターから「氣の玉」が上がったときには、息を吐いて下ろすようにする。最初の呼吸では、自分の身体の中の「氣の玉」を意識し、それが身体のどこにあるかその位置を分かった上で、それが動いたときにどうやって中心に戻すかをつかんでほしい。その後、立位のポーズやステップでの柔軟、バランスをとるポーズでも呼吸を忘れずにトライすれば、簡単にマスターすることができる柔軟ヨガの完成だ。
通常、ヨガは足を閉じておこなうが、馬に乗ることを想定したヨガの場合、肩幅ぐらいに足を開いて行おう。それもまた騎乗姿勢の向上を目指した「馬とともにするヨガ」ならでは、ともいえるだろう。