ハミを正しく受け入れていると、しぐさも表情も穏やかで、同じ馬なのに不快感を抱えているときとはまったく違う表情なのがわかる。オン・ザ・ビットの乗馬もまずはここからはじまる。
Lecture 2020.06.10
馬にとって快適であり、人にとっても自らの指示に確信できる。そんな理想的な人馬のコミュニケーションを求めて、馬乗りはハミを意識し、チェックすべきなのかもしれない。ここではより具体的な例とともにハミで解決できる問題を見直していきたい。
馬の左右の口角をはさむようにして計るビットメジャー。その幅によって数値が読み取れるしくみになっている。はじめてハミを装着する馬にとってはとても大切な儀式だ。
馬が心地よいと感じてくれるハミ選びのために、まずは計測を慎重に行いたい。馬が違和感を覚えたり不自然な緊張感を表したりすることがないことが大前提となる。馬の口の幅をビットメジャーできちんと測り、口角の左右それぞれ1cmくらい余裕があるハミを選ぶことが基本。ここで改めて確認したいのは、ハミだけでなく頭絡の「鼻革」や「頬革」。鼻革がきつ過ぎると馬は苦痛の表情になるのでそこも慎重に確認を。頬革は馬の口角に1、2本の軽いシワが入るくらいの長さに設定しよう。
さまざまな要因でハミを不快と感じた馬が表すしぐさや表情の一例。耳を伏せた怒りの表情や、頸の筋肉がせり上がった不快感のアピールなどそのアウトプットはわかりやすいものから見落としてしまいそうな微妙なものまで実にさまざま。特にハミを嫌って鼻先を内に寄せる「ビハインド・ビット」に注意しよう。
馬が積極的にハミを取りに行くためにも、ストレスのない正しいハミ装着は基本中の基本といえるだろう。ハミだけではなく、頬革の長さは口角に1〜2本程度の軽いシワが入る位を目安にして。
数ミリの差でも、馬が感じるのは大きな差。実際に腕を使って感じてみよう。ハミ身の直径がわずか3mm程度違うだけでも、指示を受け取る側の感覚は大きく変化する。太いハミだとそのあたりは柔らかく簡単に引き寄せることができるが、細いハミだと力が狭い範囲に集中してくるので同じ力でも強く感じるため、引きに対して抵抗することができない。引きを手綱に置き換えれば、人の力を馬により感じさせることができる、ということだ。
馬がハミをくわえている状態の口まわりを表した断面図。ハミは馬の前歯と奥歯の間にある歯のない部分「歯槽間縁(しそうかんえん)」に収まるよう頭絡の長さを調節し口にくわえる。銜環(はみかん)とよばれる両サイドの輪に手綱をつなげ、そこから人の指示が伝わるようになっている。
ハミに遊びがある場合に、馬がどの方向に進めばよいのかわからなくなっている場合がある。そんな時にぜひ試してみたいのがハミ身のセンターにジョイントのないストレートな「棒ハミ」だ。これだと口まわりに遊びがなく、馬も直進を把握することができる。するとこれまでのことがまるで嘘のようにしっかりと直進する。ハミを変えるだけでこれだけの変化が生まれることもあるので、トライしてみる価値は充分にある。
左の開き手綱で左に曲がろうとしても、馬はなぜか右の流れてしまう。そんな時にはDバミを試してみよう。舌全体にソフトな圧力と口角への明快なコンタクトが得やすいDバミなら、乗り手の意図が馬によりわかりやすく伝わる。
1.リングが口に入ってしまうのを防ぐ、フルチーク
口角を両サイドからはさむので左右にブレにくく、リングが口に入るのを防ぐ。また先端の環に手綱をつけてギャグビットに通して使用する、ギャグビット用頬革なども効果的。
ジョイント部分に舌を押さえる金具などを加えることで、舌の動きを制約する特殊ハミ。しばらくこれを使い続けることで舌越しという悪癖が矯正される可能性が高い。